宇宙を旅する事が容易になった未来、人々は地球を離れ、月、火星、その他の星を次々に自らの植民地としていた。
 それぞれの星を結ぶ船は政府、軍、そして星雲の旅を生業とする巨大企業によって運営、開発され、数々の船が生み出された。
 土地を増やす事に成功した人類は生産率を高め、人口を更に増大。
 一気に繁栄の一途を辿り、ついに太陽系から脱出という悲願をも果たした。
 しかし、それで人間の目標が費えたわけでもなく、人々は新たな標を探していた。

 そんな時代の中、政府、軍、そして企業からも一目置かれる船が突然出現する。
 コードネーム――『シルフ』
 風を生み出す妖精の名前がついたこの戦艦は本体機関から四枚の翼のように機体が広がっており、文字通り妖精、悪く言うならトンボのような姿をしている。
 政府でも軍でも企業でもないこの戦艦は満二十歳以下の少年少女達だけで運営され、どこにも属さない事を公表した。
 かくして、この船は異名を得る。


 ――遊楽機動戦艦シルフ、という名を。